10年ほど前、「子どもと一緒に、親も田植えがしてみたい」という声があり、それから毎年、田植えと収穫の体験を行っています。いまは12家族くらい。親子参加が基本なので、30人くらいで田んぼに入ります。「泥の感触を思い出した」と言う人もいて、田植えを体験すると、大人のみなさんがけっこう夢中になりますね。
400坪くらいです。30人で手植えをすると、かなりがんばっても1時間以上はかかる広さです。以前は、30分くらい田植えをして、昼ごはんを食べて終了だったのですが、「これは本当の体験になるのだろうか?」と疑問を感じ始めて。それで、広めの田んぼを用意して、「ぜんぶ植えるまで終わりにしません」と私が言ったら、子どもたちの様子が変わったんですね。前は飽きたり、遊んだりする子もいましたが、連帯意識が芽生えるのか、全員が一生懸命に作業して助け合ったりするのです。そんな子どもたちに、大人は引っ張られています。そして、終わったあとの、食欲もすごくて(笑)。私たちが炊いたごはんをいっぱい食べてくれます。みんなで汗をかき、自分の手でつかむ達成感は、今後いろんなことに通じると思うので、やり方を変えて良かったかなと思っています。
カマを使う手刈りです。これもやはり田んぼの面積があるので、けっこう大変です。そして、みんなの日程が合えば収穫から1ヵ月後に、籾すりと精米を見学して、自分でデザインした袋にお米を詰めるという作業をします。本来は、田植えから袋詰めまでトータルで体験できるといいのですが、収穫時期は毎年変わるので、日程の調整がなかなか難しい。それでも、いつも食べているごはんは1年かけてできるもの、そして、つきっきりで世話をする農家がいる。このことを、田んぼに来た子どもたちは感じてくれるようです。
実際にお米を食べる人たちが生産現場に来てくれるわけですから、いろいろな発見があります。私たち生産者が当たり前に思っていることも、意外と伝わっていない、そう感じる場面もあります。たとえば、「玄米と白米は品種の違うお米」と思っている人もいました。スーパーで売られているお米しか見たことがなければ無理のない話です。大人だから今さら聞けないこともあると思います。食育に、子どもや大人は関係ない。私たちも勉強になることがいっぱいあります。「田んぼとごはんはつながっている」。このことをたくさんの人に伝えていければと思います。